Creating innovative science for resolution of inflammation:
resilience and entropy of inflamed tissue.
わたくしたちの身体は、感染病原体の侵入や虚血再灌流などによって破壊されると、恒常性を維持するために、組織が以前の状態に戻ろうとする力(=組織レジリエンス)が働きます。このため炎症収束期には、組織へ浸潤した多量の免疫細胞のほとんどが一掃され、組織は瘢痕化から細胞の再生過程を経て組織修復へと向かいます。同時に炎症収束期に、炎症が起こった組織では様々な形で炎症の情報が記憶されます。例えば、免疫細胞の一部は組織常在性の細胞として組織に残り続けます。また、組織を構成する組織幹細胞にはエピジェネティックな機序を介して炎症の情報が記憶されます。この組織の炎症記憶は、病原性微生物の再侵入を防ぐ組織レジリエンスの高次機能のひとつと考えられます。
しかし、生体の恒常性を維持する免疫系や神経系などの様々な生体システムが多層的に連関し、炎症収束期における組織レジリエンスを制御する仕組みについては未だに不明な点が多いです。さらに、組織に蓄積される炎症記憶の誘導・維持機構は不明な点が多いです。
一方で、慢性的に炎症が起きている組織では、病気を引き起こす細胞の増加、異所性リンパ節様構造の誘導、細胞外マトリックスの過剰な沈着など様々な炎症性変化が起こり、これらは病的炎症記憶として組織に蓄積されます。組織内で蓄積された病的炎症記憶は、正常な組織レジリエンス機構を抑制し炎症の再燃、遷延化の原因になります。炎症の遷延化が原因の難治性疾患を制御するためには、病的炎症記憶の蓄積および病的な組織修復を“組織障害エントロピー”として統合し、炎症性組織レジリエンスの破綻を誘導する生体システム連関および細胞・分子機構を理解することが重要です。
以上をふまえ、本研究領域では、炎症が収束する際の生体反応を、組織レジリエンス、炎症記憶として研究を進める一方で、慢性炎症時の病態形成機構について、炎症性組織レジリエンス、病的炎症記憶および組織障害エントロピーとして捉え、複数の生体システムの連関の観点から研究を推進することにより新たな炎症収束学の創成を目指します。
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